最終更新日 2024年12月24日 by cuerda
(1)原子力発電所の熱量の仕組み
原子力発電所とは核発電所や原発とも呼ばれている発電所です。
火力発電所のように水を沸騰させて水蒸気をつくり、蒸気タービンを回転させていますが、その水を沸騰させる方法は核分裂です。
原子炉にあるウランやプラトニウムを核分裂させ、その熱で水を沸騰させています。
そもそも原子とは素粒子の塊で、この素粒子は宇宙を構成する基本的な粒子です。
物質を構成する最小の単位とも言われているものの、原子力発電において大切なポイントは陽子と中性子となります。
原子には原子核というコアがあり、その周辺に電子が回っているのが通常の状態です。
この核は先述した陽子と中性子で構成されていますが、この2つの粒子を離れ離れにすると熱が発生して飛んでしまいます。
この分裂はたった1つだけなら大したことはありませんが、宇宙を構成する基本的な粒子という肩書は伊達ではないです。
飛び出した中性子は次々と連鎖的に分裂していき、あっという間に膨大な熱量をつくってしまいます。
だからこそ核爆弾という兵器がありますが、原子力発電所と核爆弾は根本的に違う部分があるのが特徴的です。
もちろんそれは核分裂を平和的に利用するか、それとも兵器に転用するかの違いも挙げられますが、臨界をコントロールしているか否かが最大と言えます。
臨界とは核分裂連鎖反応状態を意味しており、原子炉においては安定した状態に入るための目安です。
臨界に達したら制御棒と呼ばれているブレーキの役割を持つ機能によって現状を維持し、暴走しないようにコントロールします。
逆に核兵器はこの臨界を最大限起こして爆発させる事が目的であるため、限界はないです。
まさに紙一重というわけですが、無論メリットはあります。
(2)原子力発電所のメリットとデメリット
まず発電するためのコストの安さです。
燃料の補充も1年に1回程度で良いため、経済的に楽とされています。
この経済性はかなり重要で、燃料の供給の安定にも繋がっているほどです。
現在における世界のエネルギー資源は石油に頼っているものの、その資源の土地は政情が安定しない中東が大きく占めています。
そのため流通ルートや価格が変わりやすいですが、原子力発電の源になっているウランは流通ルートも価格も安定しているのが実際のところです。
経済効果で付け加えるなら、発電所が新設される町や村では雇用の活性化や地元の収入の増加が見込まれます。
何よりも国家の技術力の高さのシンボルにもなっているのが原子力発電所です。
核分裂という一歩誤れば恐ろしい事態を招く発電所を運営できるという事は、それだけ自国の技術力の高さを証明できます。
それから稼働における環境汚染の少なさも挙げられており、この点は二酸化炭素の排出が多い火力発電と比較されるポイントです。
とはいえデメリットはあり、それらは総じてメリットの裏返しになったものばかりとなります。
例えばコストに関してですが、メリットで触れたコストの安さは運営および管理が順調である状態に限定されたものです。
1986年に起こったチェルノブイリ原発事故や1999年に起こった東海村JCO臨界事故、そして2011年3月11日の東日本大震災における福島原発事故が代表的といっても過言ではありません。
莫大な賠償金や保証金はもちろん、処置にかかった費用などを踏まえるとそのコストは凄まじいです。
(3)放射性廃棄物の存在がネック
また事故の発生によって避けられない放射能の放出は土壌や海洋を広範囲に汚染させ、多くの人々を死に至らしめます。
場合によっては自国の離れた地域だけでなく、周辺の国々はおろか地球にまで悪影響を及ぼす事が懸念されているほどです。
おまけに一度事故を起こした発電所を修復する事は難しく、廃炉解体されるとしても長い時間がかかるので解決までの道のりは長いの一言に尽きます。
そんな原子力発電所ですが実は2つのタイプがあり、そのうちの1つは現在定着している核分裂で、もう1つが核融合です。
核融合を利用した発電は聞きなれないかもしれませんがそれもそのはずで、この技術はまだ実験段階であります。
すなわちまだ実用化されていないわけです。
ウランやプラトニウムといった危険な原子ではなく、水素やリチウムなど安全かつ入手しやすい2つ以上の原子を融合させてエネルギーをつくるこの方法は、核分裂よりもエネルギーが凄まじいうえに必要な資源もウランに頼るよりも楽だとされています。
おまけに暴走の心配もほとんどなく、放射性廃棄物の量も少ないために汚染の影響は少ないです。
ハイリスクな核分裂よりも安全性の見込みがあり、実用化が期待されていますが問題点はあります。
まず実用するためには開発するためのコストがかかり、おまけに運営及び管理する技術を確立する事も至難です。
それに加えて放射性廃棄物の存在がネックとなっており、現時点においても前途多難な技術とされています。
しかし原子力発電において核融合の原子炉は仲間に入っているため、覚えていて損はないです。
アトックス福島復興支社より引用